本当ならきょう、射撃の英国代表アンバー・ヒルさん(23)は日本で初戦に臨むはずだった。ところが東京行きの荷造りを済ませた20日、日課の検査でコロナ陽性の判定が出る。「まさか自分が」。5度試しても結果は同じだったと英紙に語った▼
「Broken」。彼女がSNSに書き込んだ言葉をあえて訳せば「心が折れた」か「夢が砕けた」か。桜、仏閣、富士山をあしらった投稿が東京大会にかけた思いの強さを伝える▼
41年前、モスクワ五輪をめざした選手たちも無念の涙を流した。冷戦下、開幕直前に告げられたボイコット。「競技の場に立たなければ敗北」「思い出したくない。そっとしておいて」。後年、アンケートに答えた日本代表たちの言葉は重く切ない▼
同じ悲劇でも、ウイルスが突然もたらす「退場通知」の方は何ともやるせない。コロナ下で五輪を開く以上、予想された事態ではあるが、悲嘆に沈むアスリートを慰める言葉は浮かばない。試合出場が許されず、敗者になる機会さえ奪われるとは▼
安心・安全をうたった「バブル」方式は早々にほころびた。大会関係者の感染は120人を超える。激しくぶつかり合う選手の姿をテレビで見ていると、先行きに不安も募る▼
「人生ほどつらいものはないが、どれだけあらがい、前進し続けるかが重要だ」。来日後に陽性と判定され、棄権を余儀なくされたチリ代表の投稿である。どんなに留意しても悲劇は避けがたいが、堂々と上を向き、また歩き出してほしい。
「Broken」。彼女がSNSに書き込んだ言葉をあえて訳せば「心が折れた」か「夢が砕けた」か。桜、仏閣、富士山をあしらった投稿が東京大会にかけた思いの強さを伝える▼
41年前、モスクワ五輪をめざした選手たちも無念の涙を流した。冷戦下、開幕直前に告げられたボイコット。「競技の場に立たなければ敗北」「思い出したくない。そっとしておいて」。後年、アンケートに答えた日本代表たちの言葉は重く切ない▼
同じ悲劇でも、ウイルスが突然もたらす「退場通知」の方は何ともやるせない。コロナ下で五輪を開く以上、予想された事態ではあるが、悲嘆に沈むアスリートを慰める言葉は浮かばない。試合出場が許されず、敗者になる機会さえ奪われるとは▼
安心・安全をうたった「バブル」方式は早々にほころびた。大会関係者の感染は120人を超える。激しくぶつかり合う選手の姿をテレビで見ていると、先行きに不安も募る▼
「人生ほどつらいものはないが、どれだけあらがい、前進し続けるかが重要だ」。来日後に陽性と判定され、棄権を余儀なくされたチリ代表の投稿である。どんなに留意しても悲劇は避けがたいが、堂々と上を向き、また歩き出してほしい。